【東レ】強みは高機能衣料を生み出す繊維事業?/炭素繊維のトップシェアで急成長?

企業分析

産業用途の商品が多いため認知度はあまり高くないですが、東レはヒートテックエアリズムを生み出す生活に密接した企業です。

また有機化学分野において2001年にノーベル化学賞を受賞した野依良治氏を社外取締役に据える有機合成のプロ集団としての側面もあります。

そんな「東レ」の本決算が5月28日に開示されました。

今回は東レの決算資料を読み解きながら企業研究していきます。


東レと言えばヒートテックだよね!やっぱり繊維事業が強そう!

炭素繊維のイメージも強いと思う!どれくらいのシェアなんだろう?

企業プロフィール

沿革

歴史
  • 1926
    東洋レーヨン株式会社設立

  • 1951
    米国DuPont社とナイロンに関する技術提携契約
  • 1970
    東洋レーヨン株式会社が東レ株式会社に商号変更

東レの起源である東洋レーヨンは、イギリスからレーヨンを輸入・販売していた旧三井物産により設立されました。

現在でも三井グループの中核企業として東芝やトヨタ自動車とともに二木会(三井グループの社長交流会)に加盟しています。

ちなみに主要ライバルである帝人は水曜会(三菱UFJ銀行を中核とする三和グループの社長交流会)に加盟しています。

規模

繊維製品業界のライバルとしては帝人が有名ですが、東レは売上高・時価総額において圧倒的な差を見せつけています(2020年6月現在)。

東レ帝人東洋紡
売上高2.2兆円8,500億円3,400億円
時価総額8,000億円3,200億円1,300億円

平均年収と役員報酬

平均年収平均年齢
2018年度720万円38.1歳
2019年度720万円38.5歳

30後半の平均年収が400万円前半なので、比較的高めの水準と言えるでしょう。

取締役は18人で総額が11億3,000万円なので、単純に割ると1人当たり6,278万円です。

そのうち1億円を超えるのは現社長の1人で1億5,300万円です

事業内容

東レの抱える6つの事業
  • 繊維事業
  • 機能化成品事業
  • 炭素繊維複合材料事業
  • 環境・エンジニアリング事業
  • ライフサイエンス事業
  • その他の事業

その他の事業には、分析・調査・研究等のサービス関連事業等が含まれます。

売上高・利益どちらの観点からも基幹事業は繊維事業と機能化成品事業であることがわわかります。

東レと言えば炭素繊維複合材料というイメージが強いですが、実際には全体に対して1割強の割合なのです。

繊維と機能化成品が景気悪化により減速

2019年度の連結決算は売上高・営業利益ともに7%減に留めることができています。

ここから売上の落ち込みと連動して費用を削減すること(販管費コントロール)ができていることがわかります。

2019年度減益の要因となったのは、利益の大部分を占めている繊維事業機能化成品事業にあることがわかります。

それぞれの事業を見ていきます。まず繊維事業です。

繊維産業と聞くと「衰退」のイメージが強く、実際に国内市場は需要が飽和しており供給力が衰えていますが、世界的に見ると人口増に連れて需要量も増加しています。

出典:経済産業省HP(繊維産業の課題と
経済産業省の取組)

そして東レは売上高のうち50~60%以上を海外で稼ぐことに加え、ヒートテックやエアリズムのように誰もが知る高機能衣料を生み出すことで、世界に埋もれない安定収益基盤を築いているのです。

そんな安定収益基盤ですが流石に景気の低迷やコロナウイルスによる消費行動の制約により、販売数量が減少したことで減収減益となりました。

しかしコロナウイルスによるマスク需要の高まりを受け、東レの誇るエアリズムを活用したマスク事業への参入を発表しています。

コモディティ化しない高機能繊維を抱える東レは活用方法次第で、高付加価値商品を生み出すことが可能であり、今後も安定基盤となるでしょう。

続いては機能化成品事業です。

機能化成品事業の中で主力となるのは自動車や家電に利用される樹脂・ケミカルと電子部品に利用されるフィルムです。

そのため経済が低迷して自動車や家電の売上が落ちることは、東レの機能化成品事業に間接的に大きな影響を与えるのです。

また東レでは商事事業(子会社の東レインターナショナル、蝶理が担う)を機能化成品事業に含めています。

特に東レインターナショナルは東レグループ全体の売上高のうち、10%以上を1社で担うほどの影響力を持つ子会社であり、繊維商社トップの規模を誇ります。

その規模はライバルの帝人が抱える繊維商社である帝人フロンティアに対して2倍にも達し、東レは繊維商社としての圧倒的な強みもあるのです。

まとめ
  • ヒートテックやエアリズムのような高機能衣料品を多く抱える
  • 自動車や家電の売れ行きに業績が大きく左右される
  • 東レの抱える商社事業は繊維商社業界トップ

トップシェア握る炭素繊維事業

東レのイメージとして根強い炭素繊維事業について見ていきます。

2018年時点で東レは炭素繊維市場における約50%のシェアを握っており、紛れもない業界トップです。

ただしイメージに反して売上高や利益への貢献度は小さく、現状では東レ全体の1割ほどの事業でしかないのです。

しかし設備投資計画を見ると、全体のわずか1割の炭素繊維複合材料事業に設備投資全体の2割を投入しており、今後に期待していることがわかります。

この売上・利益の小ささと、東レの炭素繊維事業への積極性の間にある乖離を生み出しているのは、炭素繊維市場自体が成長途上であることにあります。

炭素繊維は鉄に代わる強度を備えた軽量材料として注目されており、現在ではAirbusやBoeingといった航空機が採用していることが有名です。

しかし特に自動車業界においては、CASE革命により自動運転技術が注目され各社注力しており、車体への炭素繊維採用による軽量化が先延ばしされているのです。

加えて東レが製造するPAN系炭素繊維の原料であるアクリロニトリル(AN)価格の高止まりも利益を圧縮する要因になっています。

このアクリロニトリルの生産は旭化成の誇る事業であり、旭化成のAN事業が好調であることからも、東レの炭素繊維事業の伸び悩みがうかがえます。

つまり現在は市場のサイズや原料価格の高止まりにより利益の小さい事業ですが、東レは今後の市場動向を長期的に捉えた上で、着実な足場固めをしていると言えます。

そんな期待は近年の大型買収にも表れています。

2014年には米炭素繊維大手のZoltekを約600億円で買収し、2018年には蘭炭素繊維複合材大手のTenCate(TCAC社)を約1,200億円で買収しました。

特にTenCate(TCAC社)の買収金額は過去最高額であり、炭素繊維事業において他社を引き離したい東レの本気が見えてきます。

まとめ
  • 炭素繊維市場の約50%を握る
  • 自動車業界の採用により急拡大が見込まれる
  • 過去最大規模の炭素繊維複合材料大手の買収実行

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