【東京ガス】特徴は業界最大の時価総額?/決算は原材料費に振り回される?

企業分析

エネルギー業界の2巨頭である電力とガス、これまではお互いに住み分けがありましたが、電力自由化を皮切りに陣取り合戦が勃発。

電力業界がボロボロになる中、ガス業界のトップ「東京ガス」の本決算が4月28日に開示されました。

今回は東京ガスの決算資料を読み解きながら企業研究していきます。


今期は減収増益らしいね!売上が下がっても儲かるってあんまり想像がつかないなあ。

電力会社は他社に顧客を奪われてるみたいだけど、ガス会社はどうなんだろう?

企業プロフィール

沿革

東京ガスの起源は、東京府瓦斯局長であった渋沢栄一が中心となり1885年に創設した東京瓦斯会社です。

数年内における大きな出来事としては、電力自由化に1年遅れてガス業界でも2017年4月から都市ガス販売の全面自由化がスタートし、激しい競争が始まったことが挙げられるでしょう。

ただし、電力業界と全く異なるのが都市ガス需要自体が増加していることです。電力事業は減り続けるパイの中での奪い合いなので、都市ガス事業はその点有利と言えます。

また、インフラ系の古い会社としては珍しい側面もあり、新卒採用にフリースタイル採用という新たな採用方法を導入したことで話題になりました。

規模

時価総額は優に1.1兆円を超え、国内電力・ガス業界でトップの座に就いています。

同じ関東圏を管轄する東京電力HDとの時価総額の差は約2倍にもなります。

次に、ガス販売量を比べてみます。ガス業界第2位の大阪ガスが74億立米という数字に対し、東京ガスは139億立米と約2倍の供給量があります(2020年5月現在)。

平均年収と役員報酬

平均年収平均年齢
2018年度657万円43.2歳

40前半の平均年収が400万円後半なので、比較的高めの水準と言えるでしょう。

取締役8人の総額が3億6,800万円分なので、単純に割ると1人当たり4,600万円です(2018年度)。

そのうち1億円を超える報酬を受け取っている人は誰もいません

事業内容

東京ガスの抱える6つの事業
  • ガス事業
  • 電力事業
  • 海外事業
  • エネルギー関連事業
  • 不動産事業
  • その他の事業

その他の事業には、情報処理サービス事業、船舶事業等が含まれています。

電力販売を積極的に行う東京ガスですが、セグメント別の営業利益から電力事業はガス事業の約1/10の利益しか出ていないことがわかります。

しかし、電力契約者数はかなりの勢いで増加しているので、今は顧客数獲得フェーズとして営業費用がある程度嵩み、利益が落ちることは許容しているのかもしれません。

減収増益は意図せずとも…

東京ガスの2019年度実績は、売上高がマイナスで営業利益がプラスという内容です。

いわゆる減収増益という決算で、営業利益は売上高と営業費用の差であるため、売上高が伸びなくても、営業費用が減少したことで増益になったことを意味します。

このような決算の場合、自動車会社や化学メーカーであれば販管費をコントロールすることで利益を伸ばしたと評価されることが多々あります。

しかし、電力・ガス会社では少し違った見方ができます。

主要決算数値を見ると、営業費用に含まれる原材料費の項目が、営業費用全体の約6割を占めていることがわかります。

ここで言う原材料費とは、もちろん海外から輸入しているLNG代になります。

価格変動の激しいエネルギー価格は現在下落傾向にありますが、これはガス会社の視点で見ると原材料費の低減を意味します。

つまり、2019年度は売上は減少したものの、費用の大部分を占めるエネルギー価格が急落したことが一因となり減収増益となったのです。

エネルギー価格の下落をもたらした原油の暴落については以下の記事を参考にしてください。

まとめ
  • ガス会社の原材料費は大半がLNG代
  • LNGの価格が下がれば売上減少でも利益が出せる

乗り換えは電力業界同様緩やかに

東京ガスグループの小売契約件数を見てみます。

2017年3月から2020年3月までの3年間で、件数で約10%の減少であることがわかります。電力業界と同様に離脱率は1割程度という状況なのです。

電力業界の離脱率については九州電力の記事にも記載しているので参考にして下さい。

まとめ
  • 離脱率はガス自由化も電力自由化も1割程度

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