システム開発を生業とする企業はあまり馴染みがないかと思います。しかし、「働き方改革」が叫ばれる中で人材活用が高評価されるSCSKをメディアで見聞きした方は多いのではないでしょうか。
そんな「SCSK」の本決算が4月28日に開示されました。
今回はSCSKの決算資料を読み解きながら企業研究していきます。

システム業界ってリモートワークの流れもあるし、相当儲かってそう!どんな調子なのかな??

システム開発と言えばブラックなイメージが強いよね…残業とか相当多いのかな?
企業プロフィール
沿革
- 1969.10住商コンピューターサービス株式会社設立
- 1992.10住商情報システム株式会社に社名変更
- 2005.8住商エレクトロニクス株式会社と合併
- 2011.10株式会社CSKを吸収合併し、SCSK株式会社に社名変更
存続会社は住商情報システム株式会社
存続会社である住商情報システム株式会社(SCS)に「住商=住友商事」とついているように、SCSKは住友商事の情報システム部門が起源です。
規模
各業界にシステムの開発・コンサル業を営む企業の中で、SCSKはTISに続く時価総額を持つ業界大手企業です。
エヌ・ティ・ティ・データが圧倒的な規模を誇りますが、売上高ではCTC(伊藤忠テクノソリューションズ)に引けを取らない規模感です(2020年6月現在)。
NTTデータ | NRI | CTC | TIS | SCSK | |
時価総額 | 1.8兆円 | 1.8兆円 | 9,000億円 | 6,200億円 | 5,800億円 |
売上高 | 2.3兆円 | 5,800億円 | 4,900億円 | 4,400億円 | 3,900億円 |
平均年収と役員報酬
平均年収 | 平均年齢 | |
2018年度 | 726万円 | 43.3歳 |
40前半の平均年収が400万円後半なので、比較的高めの水準と言えるでしょう。

取締役は10人で総額が3億4,000万円なので、単純に割ると1人当たり3,400万円です。
そのうち1億円を超える報酬を受け取っている人はいません。
事業内容

多数の事業を抱える一方で、商社・グローバルシステムとモビリティシステム以外は、売上や利益がおおよそ同水準となっています。
どこかがコケても十分に大きな他の事業で補うことのできる高レベルに分散された優良な事業ポートフォリオになっていますね。
10年以上、営業ベース・最終ベースで黒字継続
2019年度の業績は売上高が7.9%上昇し、原価・販管費コントロールもおおむね順調であったために、最終利益も10%超の上昇となっています。
さらに受注高も増加しており、非常に好調と言えます。

また業種別の売上高を見ても、全業種からの受注が右肩上がりで成長しており、各業種においてシステム開発やシステム更新の需要が増加傾向であることがわかります。

このように絶好調な背景にはデジタル社会の本格的な到来があります。
レガシー企業には未だ非効率なアナログ業務や、ひと昔前に導入され老朽化したシステムが溢れかえっており、このようなレガシーシステムの一新や更新の需要が高まっているのです。
そんな絶好調なSCSKですが、長期的な推移は更に驚くほどの堅調さを見せます。

2006年度から営業利益だけでなく最終利益ベースにおいても一度も赤字転落したことがなく、右肩上がりが継続しています。
- デジタル社会到来の波に乗り絶好調
- 10年以上、最終利益でも赤字転落なし
”人”を大切にする経営
経営理念に「人を大切にします。」とストレートに書かれているように、SCSKは人にまつわる取り組みが特徴的な企業でもあります。

現在は「働き方改革」を国が掲げたことで、各社取り組みのアピールをしている状況ですが、SCSKはそれ以前から2つの興味深い取り組みをしていました。
まず1つ目が残業をしないほど給与が上がる仕組みの構築です。
2013年4月から導入された取り組みで、「スマートワーク・チャレンジ20」(有給20日間の取得、月間平均残業20時間未満)と名付けられました。
有給や残業時間の目標達成時に特別ボーナスを支給したり、残業の有無にかかわらず固定で20時間分の残業代を毎月支給する等の、当時の大企業では非常に珍しいものでした。
このようにSCSKは、働き方改革の先駆け的な存在とも言えるでしょう。

近年では、「どこでも働ける」ことを掲げ、リモートワークや地方創生の拡大にも力を入れています。
続いて2つ目は取引先への社長からの手紙です。
いくら担当者が社内の方針で残業ができないことを告げても、顧客に理解して頂くのは非常に難しいことです。
そこで、SCSKでは社長の手紙を役員が顧客の役員層へ持参したのです。口だけの役員メッセージほど社員に響かないものはなく、役員が実際に行動したことで社員のロイヤルティも向上したでしょう。

このような取り組みを通して、残業時間が減少した一方で、有給取得率と営業利益が上昇するという、素晴らしい結果を示すことができたのです。
- 働き方改革の先駆け的な存在
- 画期的な残業をしないほど給与が上がる仕組み構築
- 顧客に理解を求める”社長の手紙”
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