金品受領問題に揺れる関西電力。コモディティを販売する事業会社にとって、ブランドイメージの棄損は致命傷になりかねません。
今後の心配な「関西電力」の本決算が5月12日に開示されました。
今回はエネルギーの視点から関西電力の決算資料を見ていきたいと思います。

金品受領問題もあるし相当業績悪かったのかな?

去年、関西電力は電気料金の値下げをしてたけど業績には問題ないの?
企業プロフィール
沿革
- 1939日本発送電設立
- 1942関西配電設立
- 1951事業再編により関西電力設立
- 1970関電初の原子力発電所(美浜発電所1号機)運開
- 1998電力会社初の海外発電事業参画
- 2020発送電の法的分離により関西電力送配電が分社化
関西電力の起源は、電力王とも称される松永安左エ門が関西配電と日本発送電を再編して設立した、関西電力株式会社です。
2020年4月1日から、発送電の法的分離に伴い、送配電部門が「関西電力送配電株式会社」に分社化されました。

東京電力や中部電力は送配電事業だけでなく小売事業も分社化したため、組織体制の違いが今後経営にどのように影響するのか注目です。
規模
時価総額は約1兆円でエネルギー業界トップの東京ガスにも引けを取りません。

電力販売量に関しては、中部電力が1,225億kWhであるのに対し、関西電力は1,130億kWhとかなり近いことがわかります。
管轄地域が接していることもあり、ライバル意識は相当なものでしょう。
平均年収と役員報酬
平均年収 | 平均年齢 | |
2018年度 | 792万円 | 43.2歳 |
2019年度 | 800万円 | 43.3歳 |
40前半の平均年収が400万円後半なので、かなり高めの水準と言えるでしょう。

取締役は19人で、総額が5億1,500万円なので、単純に割ると1人当たり2,710万円です(2019年度)。
そのうち1億円を超える報酬を受け取っている人は誰もいません。1億円以下の報酬を受け取る役員名の開示を始めたことから、透明化を図っていることがうかがえます。
事業内容
生活・ビジネスソリューション事業は、インフラ系企業によくある総合不動産事業や人材派遣などが含まれています。

電気事業が主である一方で、情報通信事業や生活・ビジネスソリューション事業も比較的大きな利益を生み出していることがわかります。
金品受領問題は影響せず
関西電力の2019年度連結決算は、売上高がわずかに減少したものの営業利益はプラスに推移する減収増益でした。

つまり、決算からは金品受領問題の影響はなかったと言えそうです。念のために、販売電力量を見てみます。

小売販売電力量は△4.1%と減少傾向にはあるものの、他の時期と比較して異様に減少した状態ではなく、販売電力量にも意外なほど影響がないことがわかります。
今期の減収増益の主な理由は、他の電力会社やガス会社と同じようにエネルギー価格の下落による原価低減です。

各社販売電力量の減少に比例して売上が減少し、エネルギー価格の下落により減収減益を免れた状況となっています。
エネルギー価格の下落の影響は東京ガスの記事にも記載しているのでご参考にして下さい。
ただし金品受領問題を巡っては2020年6月8日に、岩根前社長や八木前会長らに善管注意義務違反があったとの調査報告書が提出されています。
関西電力への損害は13億円にも上るとの指摘もあり、毎年数千億の利益を稼ぎ出す関西電力への直接的な影響は軽微ですが、今後もイメージ悪化が危惧されます。
- 金品受領問題は電力の売れ行きに影響なし
- エネルギー価格の下落で増益
- 今後の報道次第ではイメージ悪化の可能性あり
電気料金と電力会社の利益について
2017年の夏、関西電力が大幅な電気料金の値下げを公表し、同じ地域でしのぎを削る大阪ガスとの価格競争”大阪夏の陣”が勃発したことは一度は耳にしたことがあるかもしれません。
また、2018年7月にも関西電力は大飯発電所3, 4号機の再稼動を受けて、平均5.36%の値下げを発表しています。
このような値下げが収益にどれほど影響を与えるのかを見ていきます。

値上げを行った2013年5月と2015年6月を境に次の決算で大幅な営業利益の改善がみられることがわかります。10%近い値上げにより一気に収益性が改善されたためです。
2017年8月と2018年7月の原発再稼働にともなう値下げの影響はあまりないように見えますが、原発による原価低減効果が絶大なため、値下げによる影響が相殺されてしまったのです。
このように電気代をコントロールすることで、利益をいかようにも変化させることができてしまうように思えますが、電気料金の値上げには経済産業省の認可が必要(規制部門)なのです。
つまり、儲からないから簡単に値上げを要請するというわけにもいかないのです。

そのため、企業努力では如何ともしがたい燃料費の上昇により経営が圧迫されている場合であっても、限界まで他の費用を削って耐え続けます。
図のように人件費や修繕費など、他の費用を可能な限り削った上でも燃料費の上昇を吸収できないと値上げを申請するのです。
- 電気料金を積極的に値下げ実施
- 原発の再稼働が電気料金値下げのきっかけ
- 電気料金の値上げには経済産業省の認可が必要
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