小説を読む方には馴染みの深い角川文庫ですが、紙書籍の売上は年々減少しています。
そのような中で、新興IT企業ドワンゴと経営統合をして新生KADOKAWAとなったことで、どう変わることができたのか。
そんな「KADOKAWA」の本決算が5月14日に開示されました。
今回はKADOKAWAの決算資料を読み解きながら企業研究していきます。

最近の人は本を読む習慣がないみたいだけど出版業界は、ダメージを受けてないんだろうか?

KADOKAWAと言えばニコニコ動画だよね!でも最近はYouTubeやTikTokに影を潜めてる気がするなあ。
企業プロフィール
沿革
- 1945国文学研究者の角川源義が角川書店設立
- 1949「角川文庫」創刊
第1回配本はドストエフスキーの「罪と罰」
- 1954株式会社角川書店設立
- 2003角川ホールディングス設立
- 2013株式会社KADOKAWAに商号変更
- 2014株式会社ドワンゴと経営統合
- 2019株式会社KADOKAWAへ商号変更
老舗出版社のKADOKAWAと新興IT企業のドワンゴの経営統合は、既に資本関係があったとは言え、非常に興味深い組み合わせとして世間を賑わせました。
規模
ドワンゴとの経営統合もあり、KADOKAWAはコンテンツ作成から配布まで行う垂直統合型のコンテンツプラットフォーム企業になりました。
この企業形態からも、一つのコンテンツを様々なメディアで活用していく(メディアミックス)ことを重要視していることがわかります。
国内でこの事業形態を持つ企業は珍しく、海外のAmazonやAppleのようなコンテンツとプラットフォームを抑えている世界的企業がライバルとも言えます。
平均年収と役員報酬
平均年収 | 平均年齢 | |
2018年度 | 791万円 | 42.7歳 |
40前半の平均年収が400万円後半なので、かなり高めの水準と言えるでしょう。

取締役は8人で総額が7,300万円なので、単純に割ると1人当たり913万円です。
そのうち1億円を超える報酬を受け取っている人はいません。
事業内容
その他事業は教育事業等を含みます。

雑誌や電子書籍の販売を行う出版事業が売上や利益の大部分を占めています。
また、ドワンゴがメインとなるWebサービス事業は売上こそ、他事業と比較するとそこまで大きくないものの、利益率が高いために重要なカギを握ります。
電子書籍で売上をなんとか維持
2019年度の業績は売上高がわずかに減少したものの、利益は2015年度や2016年度の水準に戻すことができています。

出版市場自体が縮小する日本社会で、出版事業をメインとするKADOKAWAは苦境に立たされていることが想像できそうです。
しかし、メイン事業である出版事業を見ると紙書籍の売上が徐々に減少する一方で、電子書籍の売上が毎年伸びていることがわかります。

KADOKAWAには独自の電子書籍ストア「BOOK ☆ WALKER ストア」があり、ここでの売り上げやAmazon等への外販売上が30~50%の成長をしているのです。
今後も、紙書籍の売上減少の傾向は続くことが予想されるため、電子書籍の売上増で相殺し続けることが必要になります。
ちなみに、2020年度の業績予想は新型コロナウイルスによる影響のため非開示とされていますが、主力の出版セグメントにおいて非常にいいニュースがあります。

それは、社会現象にもなった「あつまれ どうぶつの森」の好影響です。KADOKAWAは攻略本等の関連書籍を複数刊行しています。
完売になるほどの極めて好調な売れ行きが紙書籍の減少に一時的でも歯止めをかけることができるのか大注目です。
- 紙書籍の売上減少を電子書籍の売上増加で打ち消す
- 今後は「あつまれ どうぶつの森」の好影響も
ニコニコ動画で苦戦
KADOKAWAと言えば、ニコニコ動画を思い浮かべる世代の方も多いかと思いますが、この事業は今、苦境にあります。ニコニコ動画の大半の利益である、有料会員の利用料が減少しているのです。
2017年度の大幅な営業利益減少も、「ニコニコ動画」の月額有料会員数の減少が大きく響いたことによります。

2017年度の予想に反し、2019年度の動画配信サービス「ニコニコ動画」の月額有料会員(プレミアム会員)は2015年度をピークに減少を続け163万人まで落ち込んでいます。
国内最大級の映像配信事業であるものの、YouTubeやNetflixのような海外勢、また大手テレビ局の動画配信サービスの出現により今後も減少が続きそうです。

ただし、個人で生放送の配信等ができる「ニコニコチャンネル」の有料会員数は増加しており、プレミアム会員に依存しない利益創出により相殺も可能でしょう。
年代別シェアを見ると10代が非常に少ないのが特徴的であり、少し心配要素もありますが、2019年度は費用削減効果もあり、大幅な黒字を達成することができています。
今のKADOKAWAは、「ニコニコチャンネル」等の成長するプラットフォーム上で、自社コンテンツを活かしていく、成長フェーズの入り口に立ったと言えるでしょう。
- ニコニコ動画(動画配信)は他のプラットフォームに敗北
- ニコニコチャンネル(動画・生放送配信)の成長がカギ
- 成長のために10代へのアプローチが欲しい
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