コストパフォーマンスの良い原子力を封じられ、電力需要の低迷に苦しむ電力会社。
同じ電力会社でも、地方の名前を冠した電力会社とは一線を画す電源開発の決算が4月30日に発表されました。
今回は電源開発の決算資料を読み解きながら企業研究していきます。

電源開発ってあんまり知らないけど電力会社ならあまり将来性もないのかな?

電源開発は少し前まで国営だったからねえ。やっぱり保守的なのかしら?
企業プロフィール
沿革
電源開発の起源は、1952年に国が定めた電源開発促進法に基づき設立された「電源開発株式会社」です。
その後の2003年、法律の廃止にともない政府が株式を手放し、民間会社として生まれ変わりました。
また、2002年4月1日にはコミュニケーションネームとして「J-POWER」を導入しています。ただし、正式名称は「電源開発株式会社」です。

大手電力会社と電源開発はビジネススタイルが少し異なり、大手電力会社が主に電力を家庭に販売(小売り)するのに対し、電源開発では大手電力会社や新電力に販売(卸売り)を行っています。
規模
小売事業(一般家庭に電気を供給する)を行う企業ではないため、あまり一般的には有名ではありませんが、発電力では国内6位の規模を誇ります。

また、多くの電力会社がメイン設備を火力としているところ、電源開発は水力と火力が半々に近く偏りの少ない設備形態となっているのも特徴です。
平均年収と役員報酬
平均年収 | 平均年齢 | |
2018年度 | 798万円 | 40.9歳 |
2019年度 | 787万円 | 41.1歳 |
40前半の平均年収が400万円後半なので、かなり高めの水準と言えるでしょう。

取締役は11人で総額が4億1,300万円なので、単純に割ると1人当たり3,755万円です(2019年度)。
そのうち1億円を超える報酬を受け取っている人はいません。
事業内容
その他の事業には、石炭販売事業等が含まれるようです。

セグメント別の利益を見ると、海外事業の利益比率の高さに目が行きます。
伸びの見込めない国内事業でパイを奪い合う電力業界の中で、この比率はかなりの特殊性と言えるでしょう。
電力会社の中で最も安定な収益推移
電源開発の2019年度実績は、売上高が増加で純利益が減少という内容で、大手電力会社の多くが減収増益という中で異色の決算です。

近年、電力自由化による電力販売先の奪い合いや、電力需要自体の伸び悩みがあるために、電力業界は各社苦しんでいます。
九州電力の記事を以下に掲載しますが、販売電力量が減少傾向にあるために売上を伸ばすことが非常に難しいのです。
しかし、電源開発の売上は前期比で増加しており、それどころか長期的にも堅調な売上増加を見ることができます。

販売電力量を見ても、2019年度は卸電力取引市場から調達した電力や海外での電力販売量を大幅に伸ばして前期比でプラス推移です。

このように、電源開発は他の大手電力と異なり自社の発電電力量の減少分を、海外事業などで上手に補っているために、堅調な成長ができているのです。
- 売上・販売電力量がともに増加
- 特に海外での電力販売が大きく増加
海外事業への積極性が強み
先に電源開発が海外事業で利益を伸ばしていることに触れましたが、具体的な内容を見ていきたいと思います。
電源開発では2000年前半から海外事業に参入し、四半世紀に渡り海外事業を遂行してきています。海外発電事業に関しては以下のようなものが現在進行中です。


タイや米国、中国をメインに大型の原発7基分にも及ぶ発電力を保有しており、今後も需要の伸びが見込める分野に積極的に投資をしている姿が見えます。
海外発電事業持分出力を見ると、近年の海外における発電力の伸びはイマイチですが、長期的に見ると以下のようにかなり成長していることがわかります。

現在でも電源開発における全発電力のうち4割が海外という状況ですが、今後5年間で更に海外における発電力を増やすことを目標としています。
このように、早期の海外参入が他社に差をつけ安定的な成長に繋がっているのです。
- 四半世紀に渡り海外事業を展開
- 全発電力のうち4割を海外に保有
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