【富士フィルム】強みはヘルスケアの戦略的拡大?/本業転換で強固な基盤を獲得!

企業分析

社名から写真やプリント事業がメインと思われがちな富士フイルム。新型コロナウイルス関連のニュースで頻繁に社名が登場し、疑問に思われた方も多いでしょう。

実は大幅な事業改革によりヘルスケア企業に変貌を遂げているのです。

そんな「富士フイルムHD」の本決算が5月22日に開示されました。

今回は富士フイルムの決算資料を読み解きながら企業研究していきます。


富士フイルムってフィルムの会社?どうやって生き残ってるんだろう?

最近富士フイルムって買収に関するニュースが多くない?やっぱり投資に積極的な会社なのかな?

企業プロフィール

沿革

歴史
  • 1934
    大日本セルロイドの写真フィルム部の事業を分離して、富士写真フイルム設立
  • 1946
    天然色写真に商号変更
  • 1962
    英国Rank Xerox(現 Xerox)との合弁で富士ゼロックス設立
  • 1965
    富士天然色写真をフジカラーサービスに商号変更し、販売部門を分離し、フジカラー販売を設立
  • 1952
    フジカラーイメージングサービスと富士フイルムアクシアが統合し、富士フイルムイメージング設立
  • 2006
    事業会社として富士フイルムを設立し、富士ゼロックスとともに富士フイルムホールディングスの傘下入り
  • 2019
    富士ゼロックスを100%子会社化

富士フイルムの起源はセルロイド(プラスチック)製造企業が合同で設立した大日本セルロイドです。

大日本セルロイドという名前に聞き覚えのある方もいるかと思いますが、この企業は現在でも化学品メーカーの株式会社ダイセルとして存続しています。

つまりダイセルと富士フイルムは遠い兄弟関係にあるのです。

規模

富士フイルムHDは、化学業界の中で売上高や時価総額において業界トップクラスの業界最大手企業の一つです(2020年6月現在)。

三菱ケミカルHD富士フイルムHD住友化学旭化成
売上高3.6兆円2.3兆円2.2兆円2.2兆円
時価総額9,300億円2.0兆円5,600億円1.2兆円

平均年収と役員報酬

平均年収平均年齢
2018年度997万円42.7歳

40前半の平均年収が400万円後半なので、かなり高めの水準と言えるでしょう。ただしHDなので高めに出る傾向があります。

取締役は9人で総額が6億3,000万円なので、単純に割ると1人当たり7,000万円です。

そのうち1億円を超えるのは現会長、社長、副社長の3人です。それぞれ4億5,300万円、2億6,600万円、1億8,300万円です

富士フイルムHDでは現取締役の報酬額を1億円を超えない場合にも細かく開示しており、高い透明性が好印象です。

事業内容

富士フイルムHDの抱える3つの事業
  • イメージングソリューション
  • ヘルスケア&マテリアルズソリューション
  • ドキュメントソリューション

売上高と営業利益のどちらを見ても主力はヘルスケア&マテリアルズソリューションドキュメントソリューションであることがわかります。

デジタルカメラやカラーフィルムが含まれるイメージングソリューションは売上高において約1割ほどで、もはやフィルム事業の企業ではなく大幅な構造改革が行われたことがわかります。

大きく育った景気に左右されにくいヘルスケア事業

2019年度の連結決算は新型コロナウイルスの悪影響にも関わらず、売上高は4.8%、営業利益でも△11.1%に踏みとどまっています。

このような事業環境にあっても耐え忍ぶことが可能なのは、景気に左右されにくいヘルスケア事業を太い柱に育て上げてきた構造改革が挙げられます。

富士フイルムの起源である写真フィルム事業を含むイメージング事業は需要減退とともに大幅に縮小され、今やヘルスケア事業が売上高・利益ともに勝っているのです。

研究開発費・販売費及び一般管理費を見ても、ヘルスケア&マテリアルズ事業が全体の半分を占めている一方、イメージングソリューション事業は1割にも満たない状態です。

このように起源となる事業から脱却し、他の事業にシフトチェンジすることは容易なことではありません。しかし古森元社長のこの言葉で富士フイルムは変貌しました。

車が売れなくなった自動車メーカーはどうなるのか。

鉄が売れなくなった鉄鋼メーカーはどうすればいいのか。

魂の経営

1990年代のデジタルカメラ普及とともに、写真フィルム事業の衰退は必至であり、富士フイルムや積年のライバルであったコダックは今後を非常に危惧していました。

そしてコダックがコスト削減で耐え忍ぶ中、富士フイルムは写真の酸化を防ぐ技術を活用し化粧品事業に参入したのです。

その後の結果は興味深いほどに対局で、2012年にコダックが経営破綻したのに対し、富士フイルムは化粧品事業から始まったヘルスケア事業を軸に成長を続けています。

さらに2019年度には抗インフルエンザ薬として製造販売を行っていた「アビガン」により、富士フイルムがヘルスケア企業として再注目されています。

過去に写真フィルム事業で世界を席巻した企業が、本業を脱ぎ捨てヘルスケア企業として再び世界に影響を与える、このようなことができる大企業はそれほど多くはないでしょう。

まとめ
  • フィルム事業は縮小傾向
  • 研究開発費や販管費の大半はヘルスケア事業に投入
  • アビガンによりヘルスケア企業として再注目

継続的な積極投資の姿勢

本業の転換を果たした富士フイルムは積極的な投資も特徴的です。

2017年度から2019年度までの3年間における事業買収は約3,000億円にものぼります。

また2017年度以前にも多くのヘルスケア事業における買収を繰り返しており、過去10年間における買収案件は10件以上です。

買収案件
2011年2月トルコの内視鏡製品販売代理店FILMED TIBBI CIHAZLAR PAZARLAMA VETICARET A.S.
2011年3月バイオ医薬品受託製造会社MSD Biologics(UK)Limited社およびDiosynth RTP Inc.
2012年3月超音波診断装置大手SonoSite, Inc.
2015年10月米国の高純度溶剤製造・販売会社、UltraPureSolutions,Inc
2016年8月動物の検体検査受託サービス会社、株式会社モノリス
2017年4月武田薬品子会社の総合試薬メーカー、和光純薬工業株式会社
2018年6月JXTGHD傘下の培地を手掛ける、Irvine Scientific Sales Company, Inc.および株式会社アイエスジャパン
2019年7月ドイツの内視鏡処置具メーカー、medwork GmbH
2019年8月バイオ医薬品大手Biogen Inc.のデンマーク製造子会社Biogen (Denmark) Manufacturing ApS
2019年10月放射線科向け医療用ITシステムメーカー、横河医療ソリューションズ株式会社
2019年12月日立製作所の画像診断関連事業

最終的にはヘルスケア事業単体での売上高を全体の3割にまで伸ばすことを目的としており、2019年度時点で約22%にまで到達しているため、ちょうど7合目と言ったところに位置します。

上記のように国内外問わず積極的な買収を行い、海外展開をしてきた結果、国内・海外別売上高を見ると、富士フイルムは国内以上に海外で稼いでいることがわかります。

売上高における国内比率が約40%、海外比率が約60%となっており、人口による需要減少リスクのある国内市場に過度に依存しない構造が出来ているのです。

パイプラインとしてはフェーズⅠやⅡが多い(市場に出るかは未知数)ですが、富士フイルムでは今後も医薬品や再生医療分野への本格的な投資を検討しています。

まとめ
  • 過去3年間における買収総額は3,000億円以上
  • 10年間で10件以上のヘルスケア領域における買収を実行
  • 海外売上高比率は約6割

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