【味の素】強みは圧倒的なうま味市場シェア?/高付加価値「健康」戦略に舵切り!

企業分析

誰しも使ったことがあるであろう味の素®を社名に冠した味の素。うま味クリエイターとしての市場シェアはトップクラスなのです。

そんな「味の素」の本決算が5月25日に開示されました。

今回は味の素の決算資料を読み解きながら企業研究していきます。


やっぱり味の素って味の素®の販売がメインなのかな?

日本食ブームって言うし、うま味を海外に輸出していけば凄い成長できそうじゃない?

企業プロフィール

沿革

歴史
  • 1907
    鈴木三郎助により合資会社鈴木製薬所設立
  • 1908
    池田菊苗がグルタミン酸塩の製造法特許取得
  • 1909
    「味の素®」一般販売開始
  • 1917
    鈴木商店(現、味の素社)設立

  • 1932
    味の素本舗株式会社鈴木商店に社名変更
  • 1940
    鈴木食料工業株式会社に社名変更
  • 1943
    大日本化学工業株式会社に社名変更
  • 1946
    味の素株式会社に社名変更

実業家である鈴木三郎助の鈴木製薬所と、東京帝国大学で池田菊苗が取得したグルタミン酸塩の製造法特許が、現在の味の素に繋がります。

製造方法を巡ってはこれまで様々な指摘があり、発売当初は原料が蛇であると噂されたことで、売上の激減を経験しています。

さらに1969年には石油由来のアクリロニトリルから製造していた(1970年代まで)ことを指摘され、ネガティブなイメージを持つ人は現在もいるため、イメージ払拭のための活動にも努めています。

規模

売上高は1兆円を超えており、食料品をメインに扱う企業としてはトップクラスの規模を誇ります(2020年6月現在)。

うま味に特化した企業であるため、一概に食料品メーカーの括りで比較することはできませんが、業態の近い企業は以下のようになります。

味の素日清食品HDハウス食品G本社
時価総額9,900億円9,800億円3,500億円
売上高1.1兆円4,700億円2,900億円

数ある食料品メーカーの中でも売上高1兆円を超す企業は数えるほどしかありません。

平均年収と役員報酬

平均年収平均年齢
2018年度982万円43.6歳
2019年度956万円43.9歳

40代前半の平均年収が400万円後半なので、かなり高めの水準と言えるでしょう。

取締役は7人で総額が6億6,100万円なので、単純に割ると1人当たり9,443万円です。

2018年度に1億円を超えるのは現社長1人で1億600万円でしたが、2019年度は現社長が1億6,400万円、会長が1億3,500万円、副社長が1億400万円となりました。

事業内容

味の素の抱える4つの事業
  • 日本食品
  • 海外食品
  • ライフサポート
  • ヘルスケア

日本食品と海外食品を足し合わせた食品事業で売上高の8割ほどを稼ぎ出しており、売上高・利益ともに海外での数字の方が大きいことが特徴的です。

またどのセグメントでも売上高利益率は約10%ほどとなっており、どの事業も安定期に入っていることがうかがえます。

圧倒的な”うま味”市場におけるブランド力

味の素の2019年度決算は売上高がわずかに減少したものの、事業利益は増益と安定感のある数字です。

このような安定感を生み出す源泉となっているのが、創業のきっかけでもあるアミノ酸を活用した調味料の市場シェアです。

社名でもある味の素®が代表するうま味調味料は圧倒的な市場シェアを握っており、その他にも和風だしやスープなど粉末を中心に国内トップの地位を占めています。

海外においても味の素®をはじめとした風味調味料が主力商品であり、アジア地域を中心に各国で展開しています。

特にタイ、ブラジル、インドネシア、フィリピン、ベトナムの新興5か国はFive Starsと呼んでおり、特に注力してきた地域になります。

2018年度のコンシューマーフーズ売上高のうち54%の過半数を調味料が占めています。

このように主力商品の市場シェアが非常に大きいことで、安定した収益を獲得することが可能となっているのです。

また食料品は生活上絶対的に必要であり、景気に比較的左右されにくい領域であることも、安定性を生む理由となっています。

しかし縮小する国内市場と注力してきたFive Starsの成長鈍化により、安定フェーズから次の成長フェーズに向かうことが急務となっています。

まとめ
  • 国内うま味調味料のシェアは独占状態
  • アジア圏の新興国を中心に主力の味の素®を展開
  • 抑えてきた国内外市場全体の成長鈍化により変革が急務

うま味を活かした高付加価値な健康商品販売戦略

これまで抑えてきた国内と新興アジア諸国のうま味調味料市場の成長が鈍化していることから、味の素としては次の手を打つ必要があります。

そこで味の素が今後進めようとしているのが「健康」をテーマとした高付加価値商品戦略です。

「健康」というテーマの中でも、味の素はターゲットを2つ挙げています。

1つ目が”減塩”です。味の素®が代表するアミノ酸が食塩を代替する効果があることが論文でも発表されており、この市場を狙っているのです。

そして2つ目が”加齢”です。今後高齢化が進み拡大する壮年期に向けた市場に対し、アミノ酸の身体を維持する栄養としての作用を使ったアプローチを目指しています。

アミノ酸という身体の原料とも言える上流資源のトップシェアを握る味の素は、その活用方法次第で非常に堅牢な基盤を造ることができるでしょう。

またそのような健康商品は通常の商品よりも20%も単価を高くしても売れることを味の素が実績ベースで示しているため、今後の売上高利益率の向上も期待できます。

今後の少子高齢化やそれに伴う健康志向の向上という背景が、味の素の抱える資源の活用を後押しする中で、高単価戦略の舵取り次第では大きな成長も見込めるでしょう。

まとめ
  • アミノ酸を活用して減塩と加齢を2大ターゲットに設定
  • 健康商品は通常商品より20%も高単価で利益率上昇が見込める

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